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農業のコツは、作物の成長を極力邪魔しないこと

代々専業農家をされている氣田さんに、今の生活について、これからの農業についてお話を伺いました。

氣田 修

氣田 修 Keta Osamu
(栽培品目:長いも)

将来在りたい姿から逆算し、農業を選択

将来在りたい姿から逆算し、農業を選択

ーー氣田さんの家は、ずっと代々農業をされてきたのでしょうか?

 はい、ウチはずっと専業農家としてやってきました。

ーー小さい頃から家を継ごうと思われていたのでしょうか?

 全然思ってなかったですね(笑)ただ、大学時代に、いざ就職するとなった段階でメチャクチャ悩んだんですよ。自分で言うのもなんなのですが、割と根が真面目なので、一度会社に就職しちゃったらおそらくずっと会社の為に生きるんだろうなって思って。

 じゃあ会社を定年したときに何をやるかなって考えたときに、食べ物を自分の家で作って、のんびりと暮らしたいなって。ん、ちょっと待てよ、それなら・・・

ーーもう初めから農家として自分の理想の生活を目指せば良いんじゃないか、と。

 そうですね。農家としてやっていく環境はすぐにでもあったので、一度やってみても良いかなと。それで向いてなかったら、会社に就職しても遅くないんじゃないかなって。そんな軽い気持ちで始めたのがきっかけですね。

ーー親御さんは喜んでくれたんじゃないですか?

 最初かなり反対されましたね。「絶対就職しろよ」って言われて(笑)

ーー反対された理由はなぜなのでしょうか?農業をやっているご両親からすれば、子どもが農業を継ぎたいというのは嬉しいように思うのですが・・・

 それもあるんでしょうけど、やっぱり農業の厳しさを知っているからじゃないですかね。自分達が苦労してきたので、やっぱり会社で働いた方が楽だっていうか、安定してるって気持ちはあったんでしょうね。

ーー実際に農業をやられてみていかがでしょうか?

 大変は大変なんですけど、なんていうか、体力的に大変っていうだけで、会社生活に比べると人間関係とかのストレスみたいなものはなくて、自分のペースで仕事ができるので、その辺は気が楽ですね。

 自分の性格上、サラリーマンになっていたらもしかしたら今頃死んでるかもしれないんで(笑)

ーー(笑)

 それぐらい結構弱い所があるんで、その点、農業は気性に合ってるというか、自然の中でゆったりっと仕事ができるので。

ーー会社とかだと、真面目な方ほど悩んで抱え込む傾向がありますもんね。

 本当にそう思います。

 そうしたことが農業を仕事として選択した理由なので、積極的に農業で儲けたいとか、事業として拡大したいという思いを持っていた訳ではないですね。自分が将来在りたい姿を逆算したときに、今のうちから農業を選択したみたいな形です。

 やりたくない事をずっとやって、最後にやりたいことをやって終わろうっていうんだったら、最初からやりたい事だけやった方が良いのではっていうのがありますよね。

就職活動の選択肢の一つとして農業もあるべき

就職活動の選択肢の一つとして農業もあるべき

ーー氣田さんの理想の生き方を実現するための仕事として農業を選んだということですね。

 はい、生き方としての農業ですよね。その方が、きっと自由度がかなり幅広く、選択肢も多いんじゃないかと思っています。農業って1人でやってるように見えても、こうやって色んな人と繋がったり、お客さんに体験に来てもらったりと周囲との繋がりがたくさん作れる仕事だと思っています。

ーーそういう意味では、都市の仕事の方が決まったオフィスへ毎日行って、決まった人に囲まれて仕事をするというケースが多かったりしますね。
ーー氣田さんが将来目指す農業の姿はどのようなものでしょうか?

 やっぱりかっこいい農業というか、普通の人も憧れるような仕事にしたいという気持ちはありますね。あとは、生きていく上での選択肢というか、学校を卒業して就職する際の選択肢の一つとしてもっと農業があっても良いんじゃないかって思っていますね。

ーー「かっこいい農業」というのは、もう少し具体的に言うとどのような農業をイメージされているのでしょうか?

 農業ってやっぱりイメージがあまりよろしくないじゃないですか。きつい、休みが無い、儲からないみたいな。

ーー3Kの仕事みたいな事よく言いますよね。

 でも僕からすると、農業って結構自分の時間も作れるし、趣味だとか自分のやりたいこともできたりするんですよ。

 まぁ、僕の場合は、山とかに入ったりするのが好きなので、仕事と趣味の境目が無かったりするんですが。ちょっと山の畑に行ったついでに、山菜を採ってみたりとか・・・。特に今の時期は山菜採りとかが楽しかったりするんですよね。

ーー小さい頃からそういう自然の中に入ることが好きだったのでしょうか?

 そうですね。山なんかで探検するのが好きでした。今はちょっと切り開かれちゃってますけど、昔は木がずっと並んで立っていて、その中で宮本武蔵になりきって木の棒を持ってですね、こういう低い枝、杉の木なんかをひたすら打ち落としていく遊びをよくしていましたね。

ーー(笑)

お客さんの笑顔に勝るものはない

お客さんの笑顔に勝るものはない

ーー消費者の方に伝えたいことはありますか?

 基本的には、地元の人には地元の物を食べて欲しいなっていうのがあって、青森県産というとニンニクなど割とブランド力があって、外国産なり、他の産地のものよりも値段が高かったりする場合が多いんですよね。それでもやっぱり地元の食材を選んで欲しいなっていう思いはありますね。逆に言うと、値段が高くなっても選んでもらえるように自分達生産者もならなければいけないのですが。

ーー氣田さんのところでは、牛も飼われているとお伺いしたのですが。

 今は生産者が少なくなってしまったのですが、うちでは繁殖牛を10頭ほど飼育しています。牛がいると自分のところで堆肥が作れて、畑や牧草地に撒くことができ、そこで収穫した牧草をまた牛に食べさせてというような循環を畑でつくることができます。

ーー氣田さんのお造りになられる農作物のPRポイントについて教えてください。

 まず味は間違いないんですよね。あとやっぱり長芋やニンニク、ゴボウみたいに、ずっと昔から青森で作られてきた作物を中心に栽培しているので、土地に合った健康的な農作物を栽培しているところです。やっぱり野菜も適地適作が基本だと思っています。

ーー温水熱を使って北国で南国のフルーツを育てようとしたりしているところもありますよね。

 そこに無理やりコストをかけなくてもいいんじゃないかなって気持ちは少しありますね。別にそこは南国から持って来たら良いんじゃないかなと(笑)

 ただ、話題性というか、それこそ観光とかにも繋がる可能性はあるので、無駄ではないと思いますし、個人的に興味はありますね。

ーー農業をやられていて一番やりがいを感じるのはどのようなときでしょうか?

 やっぱり消費者と直接向き合って、自分の作った農作物を食べてもらって、体験してもらって、美味しいとか、楽しいとか、お客さんの笑顔が見れたときに勝るものはないですね。結局、食べてもらうお客さんの反応を見れないと、分からないんでね。

ーーお客さんの反応を見る場としては、どのような場があるのでしょうか?

 七戸町が企画しているかだれ田舎体験で、人を受け入れたり、あとはプライベートで友達とバーベキューなんかをするときですね。友人も皆子どもが出来ていたりするので、子どものうちから「地元のものってこんなに美味しいんだよ」っていうのを少しずつ洗脳してね(笑)

ーー大事なことじゃないですか。自分で食べて体験する良い食育の方法だと思います。

会社がいやになれば農業という選択肢があっても良い

会社がいやになれば農業という選択肢があっても良い

ーー長芋の美味しい食べ方について教えてください。

 定番は、とろろと千切りを混ぜたもの。火を通すなら輪切りにして焼くだけが良いですね。あと、意外といけるのが山芋のフライです。ポテトフライみたいな感じで、細切りにして揚げるんですが、揚げたてがまた美味しいんですよ。塩をかけるだけなんですが。

ーーなんか、農業やられていて、地域の課題みたいなのってあったりしますか?

 課題はやっぱり後継者の問題ですかね。今の親の世代がやめるときにどうなるんだろうと、漠然とね...。

ーー地域の産直販売の会に今生産者さんが200人ぐらいいらっしゃるのですが、10年後にはどうなるかわかりませんよね。

 それぐらい生産者の年齢層が高くなってるし、後継者がいないって人もたくさんいますからね。そうなると、将来的に、地域の産直施設もガラガラになっちゃって、産直がメインの道の駅もどんどん廃れていくんじゃないですかね...。

 あとは、大規模農家ばかりになっても品目が限られる上に、大体作るものが皆かぶってくると思うので、多様性はなくなるような気がしますね。

ーーそうした後継者問題の解決に向けて氣田さんが考えられていることは何でしょうか?

 就農説明会とか移住説明会とかではなくて、都市部の就職説明会とかで農業のPRなどをしたいですね。転職とかでも良いと思うんですけど、会社が嫌になったら農業という選択肢もあるよみたいな感じで。ホントに寄り道のひとつとして考えてくれるだけでも良いと思うんですよ。

 おそらく興味のない人の方が殆どなんでしょうけど、ごくわずかでもハマる人は絶対ずっといてくれると思いますよ。

ーー地方への移住でよく聞く話が、都市部で人との繋がりに疲れた人が、人との関わりができるだけ少ない生活を求めて地方に移住するものの、都市部よりもかえって田舎の方が地元のコミュニティとの関わりが多くて苦労するというケースです。

 それは場所によってはあるかもしれないですね。ただ、僕の住むこの地域では、それほど蜜なコミュニケーションが地域から求められることは少ないです。

ーー一般的に、地方の農業っておじいちゃん、おばあちゃんしかいなくてっていうイメージが強いと思うのですが、氣田さんのような若い生産者さんたちも地域で活躍しているという実状が伝われば、地方での新規就農のイメージも違って来るのではないかと思います。

農業のコツは、作物の成長を極力邪魔しないこと

農業のコツは、作物の成長を極力邪魔しないこと

ーー先ほど「農業も人生のひとつの生き方として存在している」と仰っていましたが、そうした考えは、何かご自身の経験から来ているのでしょうか?

 自分の中では、単純に生きるということを考えたときに、まず、仕事は最低限食べていくためにやるという前提があると思うんですね。その後にやりがいとかが加わるんだとおもうんですが。

 仕事が食べ物を得るための手段だった場合、それなら自分で目的である食べ物を作ればいいんじゃないかというのが、僕の根本的な発想なんですよ。正直なところ、自分の食べ物は皆自分でつくる方が良いと思っています。

ーー生きることに対してもっとシンプルに考えてみるということですね。

 僕自身が生死といったことなどを結構深く考えてしまう方なんで、なんていうか、もっとシンプルに生きようと思って。変な話ですけど、僕は死に方も、なんなら別にその辺の土の上とか、畑の上で死んでも構わないと思っています。畑作業をしている内にね。自然の中で死ねたらそれはそれで理想ですね。出来ることなら漠然とですが、何かの植物になりたいぐらいで、あそこにあるような、大きな木になって、ずっと人間の行く末を見守っていきたいみたいな。

ーー何か氣田さんの優しさというか、人柄が出ていますね!自分は逆に、植物になるくらいなら死にたいくらいですね。

 (笑)

ーー何かしたくてもただ見ているだけというのは、今の精神年齢だとちょっと難しいですね(笑)

 僕は本当に観測者になりたいんですよ。なんなら、宇宙の隅っこで地球を眺めてたいみたいな(笑)

ーーもはや何か達観してますね (笑) そんな氣田さんにとって、作物とは一体どういう存在でしょうか?

 強いですね、植物は。多少千切れたりしても構わず成長していきますし。なので、僕たち農家は植物の持っている生命力を引き出すというか、極力(植物の成長を)人が邪魔しないことが大切だと思っています。どんなに可愛くても過保護にしないというか(笑)

ーー最近は、水をやらずにトマトに強いストレスを与えて甘くするという栽培もありますよね。

 植物はストレスを感じると味が濃くなるんですよ。

ーー 野菜や果物の味が単純化しているような気もしているんですよね。とにかく甘いもの、糖度が高いものが美味しいみたいな。

 野菜なんか特にですが "らしさ" が残ってないと、とにかく甘ければ果物で良いじゃんってなりますもんね。農家として、作物本来が持つ独特の風味みたいなものは残しておきたいんですよね。

ーー 人それぞれではありますが、私は酸味があるトマトの方が好きなんですよね。

 僕も酸味のあるトマトの方が美味しい派ですね。

ーー 先ほどトマトを食べさせて頂きましたが、1週間くらいお金を払って畑に通わせて頂きたいですね。

 そういうのも良いと思うんですよ。1週間なり家に泊まってもらっても良いし、町の宿泊施設に泊まってもらっても良いですし。朝だけとか畑に来てもらって、農作業や畑の作物をその場で食するみたいな。

ーー1週間で健康診断の数値が劇的に改善しそうですね(笑)

 なんか保養所みたいな形にもできるんじゃないかなと思うんですよ。朝なり動ける時間にきて、野菜とか持っていって、後は景色楽しむなり、絵描くなり、写真撮るなり、のんびり釣りするなりして過ごして。それで旅立っていくみたいな。

ーー すごく良いですね。夜に勝手に来てこの庭に座ってたらすいません(笑)

 (笑)

 でもほんと、農業って一次産業ですけど、可能性としては、教育でも医療でも、なんでも幅広く繋がる可能性はあると思うんですよ。そうした部分でも、農業が広がって行くと面白いんじゃないかと思っています。

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